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アース・オーバーシュート・デー、2023年は8月2日:トレンドは横ばい、逆転にはまだ遠い

国別フットプリント・バイオキャパシティ勘定の最新版 2022年までの世界と180カ国以上の動向を報告

スイス、ジュネーブ 2023年6月5日 -今年の「アース・オーバーシュート・デー」は8月2日になることが、最新の「国別フットプリントとバイオキャパシティ勘定」からわかりました。昨年の7月28日に比べて5日遅れる結果です。しかし、実際にはそのうちの4日間はデータセットの改善が反映されたためであり、逆転の傾向にはまだ程遠いと言えます。

「国別フットプリント・バイオキャパシティ勘定」は、常に信頼性と透明性の高い算定結果をを提供しています。これはFoDaFoヨーク大学によって独立して維持・強化されています。各版では1961年から最新の年次まで再計算され、年次や国を超えた一貫性が保たれています。アース・オーバーシュート・デーはこの結果をもとに計算されます。従来は、国連のデータの報告が数年遅れることから、算定年次が3年ほど遅れる傾向がありましたが、最新版の報告書ではその遅れが短縮されました。

アース・オーバーシュート・デーの日付は、過去5年間は横ばいの傾向を示しています(図1参照)。この中で、経済の減速によるものと計画的な脱炭素化努力によるものを分けて判断することは困難です。ただし、確かなことは、まだオーバーシュートの削減には至っていないということです。国連のIPCCは、「2030年までに全世界の二酸化炭素排出量を2010年と比べて43%削減する」という目標を掲げていますが、その達成には、今後7年間、アース・オーバーシュート・デーを毎年19日間ずつ遅らせる必要があります。

今年の「アース・オーバーシュート・デー」は、スロベニア共和国とともに迎えられます。スロベニアの環境・気候・エネルギー大臣であるボヤン・クメル(Bojan Kumer)氏は、「スロベニアの長期的な成功はオーバーシュートによって脅かされている。そのリスクを回避するために、スロベニアはエコロジカルフットプリントの削減目標を採択し、グローバル・フットプリント・ネットワークなどの組織と協力して達成を進めていく必要がある」と述べています。

同様に、グローバル・フットプリント・ネットワークのスティーブン・テッベ(Steven Tebbe)最高経営責任者(CEO)は、「長期化するオーバーシュートは、異常な熱波、森林火災、干ばつ、洪水など、これまで以上に深刻な影響を引き起こし、食糧生産を危うくする危険性がある」と警告し、「都市、国、企業が繁栄を望むのであれば、自らの資源の安全保障を促進することが重要。それは世界にとっても有益なことだ」と主張しています。

アース・オーバーシュート・デーのホームページには「Power of Possibility(可能性の力)」というプラットフォームがあります。このプラットフォームでは、オーバーシュートの逆転と生態系の再生(リジェネレーション)を目指し、民間技術、政府の戦略や公共政策、そして市民や大学・研究機関による取り組み事例を数多く紹介しています。これらの取り組みを拡大することによって、「アース・オーバーシュート・デー」の日付を大幅に後ろにずらすことが可能です。具体的な例として、世界の低炭素電力源を39%から75%に増やすと、アース・オーバーシュート・デーは26日遅れます。また、食料廃棄を半減させると、13日遅れる効果があります。さらに、樹木の間作を行うと、2.1日遅らせることができます。

図1.アース・オーバーシュート・デーの日付の推移(赤の領域は生態学的赤字を示す)

その他のリソース

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エコロジカルフットプリントについて

エコロジカルフットプリントは、人間活動が必要とされる生物資源量を包括的に算定する指標です。食糧、木材、繊維、二酸化炭素の吸収、インフラ整備など、生物学的に生産性の高い土地や水域に対する需要を総合的に評価します。この計算には1か国1年あたりで約15,000のデータポイントが必要とされます。最新の報告によれば、化石燃料由来の二酸化炭素排出量(カーボン・フットプリント)が人類のエコロジカル・フットプリントの61%を占めています。現在、「国別フットプリントとバイオキャパシティ勘定」の計算は、FoDaFoとカナダ(トロント)のヨーク大学が維持・運営しています。

 

グローバル・フットプリント・ネットワークについて

グローバル・フットプリント・ネットワークは、人々が地球の恵まれた環境の中で生活し、気候変動に対応できるよう支援を行っている国際シンクタンクです。2003年から活動を続けており、50以上の国、30以上の都市、70以上のグローバル・パートナーと協力し、重要な政策や投資の決定をサポートすための科学的な洞察を提供しています。

詳細は同団体のホームページを参照(www.footprintnetwork.org

 

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katsunori.iha@footprintnetwork.org 伊波克典(日本担当)